(………あなたの事ばっかり、
見ていたよ……。
……私は、あなたに気づかされた…
本当は…私……)
それから一年後の卒業式。
帰り道は、
いつものようにのんびりした空模様だった。
桜が絵に描いたように咲き誇っている。
「私、寂しかっただけなのかな」
「……なんだよ急に」
「マスターに会えたらね、言いたいことがあるの」
「ありがとうは、あの時言ったよな?」
「うん。でも、ただのありがとうじゃないんだ。
私は、誰よりも幸せで、幸運だよって。
お母さんに守られて、
マスターに守られて、
今は…」
蹴人の前に立ち、リルナはお辞儀した。
「…………だから、言いたいことはありがとうだけど…。
私と、出会ってくれて、
本当にありがとう。
…って、
あっ」
蹴人はリルナを抱き締めて、
それからゆっくり彼女の瞳を見て言った。
「俺の方こそ……ありがとう」
「卒業式終了直後にお熱いですな〜!」
「…!!ふ、二人とも…!」
「…いや…リルナの方から…!」
「抱きついたのは…久波じゃなかった〜?」
笑顔で母校を後にし、
リルナは感じていた。
―――私には生きる動力源がある。
それはこの先、
変わることがないものだろう。
私には少なくとも、そう感じられた。
みんな、出会ってくれたみんなが、
私の、宝物だから…――――
ラック・ガール
完