「連理」
ゆっくりと歩幅をゆるめて歩く連理。
普段と変わらない様子を装っているのだとしたら失敗だ。
身体中が緊張している。
「アイツなんだろ…連理の…好きだった家庭教師」
「…」
黙ってる。
それは答えだ。
俺は妙に苛立ち…さらにアイツが嫌いになった。
完璧な大人。
あまりにも俺と違う人種。
生まれながらの勝ち組気質が全身から漂う男。
だから、嫌いなわけじゃない。
気づいたよ。
嫉妬だね。
連理にこんな顔させた奴に対しての嫉妬。
「まだ好きなわけ」
口をついてでる、つまらない言葉。
答えは欲しくない癖に。
「…琉聖」
「なに?」
連理は蒼白な顔で、俺の頬を撫でた。
「今日、ごめんな」
傷つけるつもりはなかったんだ、と耳元で囁いてそっとキス。
不意に、俺はしがみついて離れそうになる唇を引き寄せた。
人目もどうでもいい。
「聞いたよな、お前」
俺は怒ったように口走った
「静留より今はお前が好きだ」
連理は驚いて俺を凝視した
「マジで?」
俺は俺自身にずっと問うてきた疑問に答えを出した。
「…マジで」
連理が、笑った。