連理は結局、昼休みが終わってようやく帰ってきた。
顔つきはどこかボンヤリとして、髪は乱れていた。
俺は顔を背けた。
そして…連理は初めて…俺と「特別な関係」になって以来、初めて…俺に声をかけずに教室を出ていった。
必ず一緒に帰っていたのに
一瞥もくれずに。
俺は悲しみよりもまず怒りが襲い、…時間が経つごとにやはり悲しみに移り変わっていった。
帰り道、静留と二人。
案外天然な静留はいつもと変わらない様子で、ミステリーの話をしている。
俺はそれを右から左へと流しつつも感謝していた。
あの毒を帯びた甘ったるい声のあとでは
静留の声は清らかな清水のように心に染みるから。
今では痛みを伴わない静留の笑顔も嬉しかった。
連理のことを考えずに済む方法はないけど
独りぼっちでいるよりはずっと救われる。
静留と別れて、帰り道。
ずっと鳴らない携帯を持ってる俺がいた。
メールも
電話も
その日、連理からくることはなかった。
俺は怖くて、何回も文章を打っては、消していた。
先生が好き?
打っては消す。
この簡単な
五文字を。