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クレイジーキャット 21

にゃんこ 2011-03-16投稿
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「やあ、来たね、吉川君」
明らかに俺はどうかしている。
こんな防音の密室に2人きりでいるとは。

「大丈夫、今日は部活もないらしいし…職員室じゃ話せないこともここならね」
グランドピアノに体を預け品定めするように俺を見る
なぜだろう、ただの言葉もコイツが言うと含みがあるように聞こえ…淫靡な匂いさえする。

庄野はピアノの蓋を開け、軽やかにドビュッシーの月の光を弾き始めた。

「ピアノを聴きたくてきたんじゃないけど」

その素晴らしい指捌きに魅せられながら、かろうじて呟いた。

庄野は俺に微笑んだ。

初めてみせた無邪気な笑顔だ。

そんな顔をするとまるで害のない人間に見える。

「もう少し傍においで」

柔らかな旋律にのるような甘い声。

俺は、どうしようもなく心臓が高鳴っていた。

離れた方がいい。

コイツは危険だ。

それなのに足は踏み出し、気づけば庄野の真横に俺はいて…

ふいにピアノは鳴り止み、庄野は冷たい指で俺の手を取った。


「この前はすまなかった」

…どうしたら

手を手に添える、それだけの動作を

これだけ甘美に感じさせられるんだろう?

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