「…は…っ…あ…っ」
淫らな音で寝室が満たされている。
こうなるのは彼がありがとう、と答えた時に既に決定していた気がする。
部屋に上がったら、もう必然だ。
〜1時間前〜
泉堂さ…いや、泉堂は部屋に上がりネクタイを緩めた
その動作が計算された色っぽさを生み出し、頑なで清らかなイメージから一変させた。
「何故かなあ…」
俺を振り返り上着を脱いで座椅子に乗せた。
「なにが?」
たぎる情欲に声が低く掠れる。
彼がゆっくりと近づき、俺の唇に指で触れた。
「こんなこともあるんですね、困ったな…」
俺はその華奢な手首を掴み囁いた。
「こっちの台詞です」
ドキドキする。
クラクラする。
出会って一日しか経ってなくても…
こんな綺麗な人が自分の腕の中にいるとは思えなかった。
ああ、もう
どうなってるんだろう
最上級の悪夢みたいだ。
恋に囚われるのはうんざりだった。
裏切られるのも
かりそめの欲情も
そこから派生する諸々の感情に辟易していたのに
キスが全てを覆す。
唇が触れた。
侘しい部屋から始まった。
恋は…始まってしまった。