原島はこちらをチラリともせず『チャラけてないですよ。』と笑った
「ただ何か、俺も色々面倒臭くて。」
さっきからコイツは…
いちいち遠回しの言い方に苛々する。
「…じれったいんですよ。」
言いながら原島はシャツのポケットから煙草を取り出した
「吸っても?」
俺が頷くと慣れた手つきで1本抜き出し火を点け不味そうに目を細める
すぅっと吐き出した紫煙と共に言葉を繋いだ
「佐木の、退職理由を聞いて良いですか」
ドクン、と胸が脈打った
「……答える事はできない」
「個人情報だからですか?」
間髪いれずに問い掛けられ、一瞬タイミングを失ってしまった
「それとも所長の個人的理由?」
「っお前…!」
思わず原島の襟首に掴みかかってしまった。
周りから小さく悲鳴が聞こえ、ハッとする。
「気に障りました?」
挑発的な態度に
また苛立ちが膨らむ。
「…ッ」
乱暴に手を離そうとした瞬間
それを制するかのように原島は俺の手首を勢いまかせに掴んだ。
「なん…」
「ハッキリ言いましょうか。…俺はね
佐木が自分から退職した理由を聞いてるんです」