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必要悪 1

ポッキー 2011-05-12投稿
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「…ははっ、お前…正気なわけ?
僕を好きだって…?」


藤咲燐はにっこり笑った。
長い足を邪魔臭そうに組んで、まっすぐな黒髪に指を通した。

「遠藤…翔真さん、だっけ…?」

俺の名前を味わうようにゆっくり吐き出して、笑顔はなおも張り付いたまま。

「なるほどね、明日で予備校も終わりだからダメ元ってわけ?」

声がでない、俺は…。

彼は面白そうに体を起こして目の前に立った。

そっと顔を近づけてくる。少しだけ爪先をあげて、耳元に唇を寄せる。

「…気持ちわりぃんだよ…糞が」

美しい顔立ちが歪むことのないまま、間近に俺を見つめていた。

真っ黒な、沼のように輝きのない瞳。

まだ少年ぽさの残る華奢な体から発されるオーラ。
それはかつて、感じたままの揺らぎ。

殺人者の、邪悪のオーラ。


俺は蛇に魅せられた蛙のように、その目を見下ろしていた。

ああ、やっとこの時がきた
やっと、「本当の君」を見つけた。

俺は震える指をその白い頬に伸ばした。

「燐」

囁く。

何の感情もない鮫のような瞳がまたたいた。

それから、静かに俺を見つめた。

「…木戸…?」


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