暫く沈黙した後、意を決したかのように原島は深く息を吐いた
「所長、佐木の裸…見たことあります?」
「げは…っ!」
あまりに唐突の質問に
俺は煙草の煙にむせながら首を思い切り横にふった。
「なん…っ」
慌てる俺を余所に原島は至って真面目な顔をしている
「ないですか?…腕とかは?」
腕…?
何だ…?
「…ねぇよ」
第一気にしたことがなかった。
あの時も俺は後ろからがんがん突かれてたし
余裕無かったし
それに…佐木は脱いでなかった、し
「…あいつ
…ガキの頃虐待受けてたっぽいんですよ」
「………え?」
原島は指先から忘れられたように零れる灰を見つめながら言った。
「さっき言ってたでしょ?佐木に呑ませまくった日…
あいつ酔い潰れちゃって自宅まで送ってやったんですよ…そしたら熱いっつって着替えだして…」
「身体中にね、いくつもあったんです」
「何が?」
「傷や痣…根性焼きとかね」
"それ、どした?"
"親がやった"
…
何だ、それ
「…"受けてたっぽい"て何だよ…普通に…虐待じゃ、ねぇか」
あまりの事に、うまく言葉が繋がらなかった。
この歳になっても残るなんて
どれも深い傷だろう
「でも佐木はそう言わなかった。」
「…え?」
「…アイツ…笑ってたんですよ。
まるで楽しい思い出話でもするかのように」