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輪廻 2012-03-29投稿
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―――可愛くないコねぇ…。
どうしてあんなのウチに……。


(うるさい…)


―――仕方がないだろう。
兄さんがああなってしまえば…。


(……父さん、父さん…!)


コンコン

丁寧にノックをする音で、どうにか耳を盗み聞きから離せた。
ベッドからは起き上がらず、
うっすらと碧い瞳をドアに向け、掠れた返事をした。
恐る恐るこの部屋の以前の住人が入ってきた。

「ティアちゃん、今大丈夫?」

「うん、少し眠りかけてた…」

碧い瞳をした少女はティアという名で呼ばれ、少し表情を和らげた。
苗字で呼ばれて、よそよそしくされるとばかり思っていたからだ。

「倫子(ノリコ)、私に部屋くれて、有難うね。ごめん、こんなに良い部屋」

「ううん、仕方ないよ!ティアちゃんこそ大丈夫?その…」

ティアは必死に笑顔を繕ったが、泣き腫らした顔が痛々しかった。

「お母さんが見つかれば、お父さんも帰ってくるんでしょ?」

「うん、書き置きにはそう書いてあった。イギリスだもんなぁ。私には縁がないや…」

そう言ってベッドに投げ出した長い髪は、眩しい金だった。
倫子はきらきらした瞳で彼女を見ていた。

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