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彼女の望んだ解答 Q2

輪廻 2012-07-17投稿
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「あれ……」

恭太はちらっと雪美に目を向けると、
彼女の額から、汗が珠のように滲んでいるのが分かった。

「もしかして……先生も暑い?」

「…………。私語は慎みなさい」

雪美は恭太をじっと見つめたまま、
表情は崩さなかった。
むしろ、固定されたまま崩せない様にも見える。
それほどまでに、不自然な仏頂面に、恭太はついつい口を開きたくなった。

「先生って……学生時代、滅茶苦茶モテたでしょ?」

「守岩恭太…。補習要項をさらに…」

「ああ〜〜ごめんなさいごめんなさい!!今、やります!やりますから!」

息を吐く声と同時に、雪美は恭太から視線を外し、黒板を見やった。

つい考えるのは、今しがた彼に問われた学生時代の自分。


――水下雪美、数学はいつも通り満点だな。

水下さんて、本当に綺麗で、羨ましい。

水下って、彼氏とかいるの?

水下さん、あの超難関大学受けるんでしょ?

きっともう、将来設計とか自分で完璧出来ちゃってんだろうな〜。

水下さんて、あの大学に結婚決めた彼氏さんがいるんでしょ?

だから必死であんなに勉強してんのか。

私たち一般人には分からない世界だよね。

きっと俺らなんか馬鹿に見えてんだろ。

相手にもされねーよな、俺らなんかよ。

水下……心の中で馬鹿にしやがって……。

水下さん………羨ましい………。

水下さん………………


雪美は…俺には勿体ないよ……きっと―――


「…!!先生!先生!おい!!できましたって!!」

「!!!」

雪美はいつの間にか眠ってしまっていた。

もう外は夕暮れ、空は赤く染まっていた。

「…ごめんなさい。補習、お疲れ様でした」

「先生……寝言…言ってたんだけど…」

かあっと雪美の顔が紅くなる。
しかし恭太は茶化すつもりではなかった。

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