「なっ!すごかっただろ!このAV!!」
友人に招かれた恭太は冴えない表情で、友人二人のやり取りを見ていた。
「確かに水下先生似だけどさ〜。やっぱ実物には敵わないわな〜」
「恭太、お前にも貸そうか!?」
「ばぁか、俺はまた今日夕方に、補習の結果が返ってくるんだよ。本物に会うことになるってーの」
――あれ以来、水下先生とは一度も目を合わせてないっつーか。合わせてくれないっつーか。
とにかく、気まずい。
だから今日の補習プリント返しは本当に憂鬱で、仕方がない。――
夕方、恭太は教室で雪美を待っていた。
どうせまた補習を追加されるに決まっていると、塞ぎこんでいると、雪美は静かに教室に入ってきた。
「守岩恭太、補習合格です…。以上…」
「え?か、帰っていいんですか…?」
雪美はこくん、と頷いた。
彼女の顔色が悪いのが、恭太には気にかかったが、一先ず補習合格を喜ぶことにした。
「良かった〜!!先生のおかげですよ!俺、数学だけは中学からずっと赤点続きだったから」
「そうですか…」
雪美はしばらく恭太を見つめていたが、
途端に、膝から崩れ落ち、危機一髪で恭太が抱き留めた。
「…!!はぁ、はぁ、あっ…危な…」
一歩間違えれば、黒板の縁に頭を強打していた。
「ごめんなさい……!すぐ立ち上がって……」
雪美は、がくがくと脚は震え、恭太に一層寄りかかるしかなかった。
シャンプーの香りが近くなる。
雪美と恭太の顔はわずか数センチだった。
「先生……」
「守岩恭太……私を床に寝かせて……」
「嫌だ……」
「守岩…恭太…」
「先生……」
「守……岩…」
「先生…」
「恭太…ッん…!」
二人は唇を重ね、じっくりと舌先でまさぐりあった。
まるでそうすると分かっていたかの様に。
気持ちは感じていた。
夏休み、補習をしている時。
ずっと。
お互いに、男と女の目で見つめていたこと。