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彼女の望んだ解答 Q22

輪廻 2012-07-25投稿
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「はい、席について。…みんな、朝会でも聞いた通り、水下雪美先生が夏休みの見回りの最中に、何者かに刺されました」

「犯人は分かってないんですか!?」

「なんで刺されたんですか!?」

「みんな落ち着いて!いいから、話を聞きなさい!水下先生はどうにか一命は取留めましたが、重体には変わりありません。ですから以後の数学の授業は…………」


恭太は話を半分も聞かず、ぼんやりと外を眺めていた。



「夜の九時だぞ……。何時間見回りしてんだよ……」

恭太は半ば怒りながら、彼女の携帯番号に電話をかける。

出たのは、聞き覚えのない、焦った様子の男性の声。

――もしもし!?
この携帯電話の持ち主の女性の、
お知り合いの方ですか!?
救急隊の者ですが…!!
落ち着いて聞いてください!

「え…?」

いたずらであってくれと、
手術室から雪美が出てくるまで、
ずっと俺だけが騙されているんだと、
ずっと俺は質の悪いいたずらをされているんだと、
願っていた。

手術室から出てきた雪美は、蒼白な顔をして眠っていた。

「雪美………雪美…!」

「安静に…!患者さんは安静にさせてください!」

雪美は、二日間目覚めなかった。

その間に、芋づる式に俺と雪美の関係は他の教師たちに、ばれた。

状況が状況だけに、俺は責められず、一旦不問となった。

雪美は、三日目の朝に、ゆっくりと目覚めた。

「…!雪美、分かるか…?」

「…………………恭太…」

「雪美!今、先生呼ぶからな…」

「先生は…………私…だよ?」

「!…馬鹿野郎…!!」

恭太が何故涙を流しているのか、雪美は直ぐには理解できなかった。

それから、

自らの身に起きたこと。

恭太との関係が発覚したこと。

目が覚めるまで、恭太が身の回りの世話をして、つきっきりでいてくれたことを、

雪美は知った。

「…………………ごめん…なさい」

「本当に……もう……絶対、嫌だからな」

――ああ、そう言えば、
見回りに出る前…何かとてもくだらないことで悩んでいた気がする……。

「恭太…手、握って……?」

――こんな簡単に、答えが得られたのに…。

言葉も何も要らない。

ただ、手を握ってもらうだけで…。

簡単に…。

「ね……恭太……」

「………?」

雪美は、彼の厚い手に頬擦りして、その途端に込み上げた熱いものを、我慢しきれなくなった。

「私………生きてて……良かった!!……もう…!!恭太に会えないんじゃないかって…!!恭太の声…聞けないんじゃないかって…!!本当に怖くて…!!!怖かった…!怖かったよ……!!!」

「………うん……俺も…怖かった」

個室の病室に、雪美の泣き声がしばらく響いていた。

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