泣き疲れて二時間ほど眠った後、
花子は起きた。
貴斗は虚ろな目で、花子を見ていた。
「貴斗さん…ごめんなさい……。
取り乱しました…」
「…っせぇーなぁ、寝てろよ」
「マウリを淹れますね…」
「花子……」
「なんですか?」
「お前が初めてだわ、
俺の前であんな号泣した女」
「…そ、…そうですか…はい、どうぞ」
「…お前、案外かわいいとこあるんだな」
「…ぁ、ありがとうございます」
貴斗の向かいの席に座り、
花子も外を眺めた。
「天界の案内人は、殺人や生き物を殺した者、自殺者から選ばれます。
だから貴斗さんは、案内人にはなりませんよ。
…良かったですね」
「お前……寂しいのか?」
「べ、別に、さ、寂しくなんか…」
「じゃあ明日の夜は、思い切りヤるか」
「もう……最低です」
「なぁ、天界のヤツと死者の子どもって…できんのか?」
「だ、だから、前代未聞なんですって!
案内人を一日や二日でどうこうしようなんて!…聞いたことありませんから!!」
「…ふぅん……」
じっと見つめられ、花子は目を背けた。
貴斗の冗談半分が、今は本気に感じられるからだ。
「あ、明日が、勝負ですから!
明日一日でこの雨が止めば……
賭けは……終わり…ですから」
二人に長い沈黙が生まれた。
貴斗も花子も、じっと互いの瞳を見つめていた。
睨むわけでも、覗き込むわけでもなく、
しかしじっと、二人は見つめ合っていた。
二人は、同じ事を考えていた。