武道場の中では、案の定弓道部員が活動していた。
辺りを見回し、翡翠を探す。
…いた。
翡翠は一番端の方で弓を構えていて。
その姿勢は誰よりも綺麗だった。
…下手すると男でも惚れるなアレは。
それぐらい思わせるような何かが翡翠にはあった。
まぁ、いいや。
いつもみたいにからかってやろ。(面白いから)
そう思って近寄り、大胆に後ろから抱きついてみた。
「ひーすい♪」
「!!?」
翡翠は驚いて持っていた弓矢を落とした。
そしてこちらに振り返る。
「…須、藤…!?何でここに…っ、つーか離れろバカ…!」
相当パニクってんのか、いつもより早口だ。
普段じゃ見られねえよな、この人のこんな姿。
クールな仮面を剥がすのは、やっぱ面白い。
「何でって…遊びにきたのよ?翡翠くんに会いたかったからーん」
女口調で、唇を尖らせ頬にキスした。
「…っ!」
翡翠の顔が真っ青に染まる。
それは周りの注目を浴びたからなのか、男の俺にキスされたからなのか…。はたまた両方か。
「…ば、か…野郎が!!」
翡翠の怒鳴り声が武道場に響く。
……そんな怒んなくてよくね??