彼の舌は、穴に通じる外壁を掻き分けるように、耳の中で暴れ、突き進んでくる
クチュクチュクチュ
舌の動きで響く音が、まるで自分が滴らせている液のような気がして、恥ずかしくなる。
「あぁんっ!アンッ んっアンッ!」
『感じいるんだね』
彼の仕草一つ一つが、私の官能のボタンを押していく。
新聞を読んでいるオジサン読書中のOL、遠くで聞こえる高校生の会話、うたた寝しているおばさん。。。
窓の外の景色も、満員の電車も、いつもと同じなのに、私は今、いけない快感に身を委ねている。
ダメなのに!
知らない人なのに!
なのに彼は私の体の仕組みを識りつくしている。
「次は向山。向山。降り口は左側〜」
いつもどおりのペースで進む電車は、T学院のある駅へと到着する。
「降。。り。なきゃ。。」思ってもないことを言っちゃう。振り返って彼を見る
『放っておけないよ』
ギュッ!
抱き締められる。
プシューッ!
ドアが開く。
『おいで』
彼が私の手を引き、反対側のドア、優先席横に連れていく。人込みに逆らうように進む二人。
『名前は?』
「斎藤杏奈」
『杏奈』
低い声でゆっくり呼ばれる名前に、胸を締め付けられる。