バタン、と大きな音を立てて閉じられる扉。
「えっ!?あ、ちょっ、佑…っ!」
彬の腰と背中に腕を回し、引き寄せる。
唇を塞いで彬の声ごと飲み込んだ。
舌で唇をこじ開け、口腔を犯す。
歯列をなぞり、吸い上げると、強張っていた躰が徐々に弛緩してきた。
「…んっ…ぁ…」
彬の声に甘さが混ざり始める。
初めは戸惑いを見せていた彬もおずおずと自ら舌を絡めてきた。
くたりとこちらに体重を預ける様になって漸く唇を解放する。
俺の肩に額を乗せて彬は荒い息を吐いていた。
「ゆ…佑兄…」
「彬」
「あっ…」
躰に力の入っていない彬をゆっくりと押し倒した。
絨毯の上に散らばる色素の薄い滑らかな髪。
顔に掛った髪を掻き上げて現れた額に口付けた。
「佑兄、ダメだよ…。下にはおばさん達、居るし…」
「分かってる。これ以上はしないから。だから、もう少しだけ…」
不安げに揺れる瞳を隠すように親指で瞼を辿る。
伏せられた彬の長い睫を親指の腹で感じ、その閉じられた瞼に唇を降らせた。
「ん…」
くすぐったさに彬が身を捩る。
逃がさない様に捕まえて、もう一度唇に触れようとしたその時。
――コンコンッ
「佑樹ー?彬君のお父さんが持ってきてくれた梨、剥いたんだけどー」
母さんの声に二人揃って「げっ」と言って、慌てて躰を離した。
「は、はいっ!!」
明らかに不自然な返事になってしまった。
扉を開けて梨の入った器を受け取る。
その時、チラリと中を覗いた母さんが、
「どうしたの?二人して赤い顔して…。もしかして…エッチなビデオでも見てたんじゃないの?」
意地の悪い笑みを浮かべて言う。
また余計な事を…。
「な、何言ってんだよ!」
冷や汗を流しながら母さんを部屋から追い出す。
閉じた扉に凭れて「はあああぁぁ」と、大きな溜め息を吐いた。
「焦ったー」
「おばさん中々目聡いね」
「感心してんなよ…」
部屋の中央にあるテーブルに器を置いて、フォークで梨をザクッと刺す。
ある意味ちょうど良かったかもしれない。
これ以上はしない、と言いながら止められたかどうか怪しい所だった。
「高校卒業したら絶対一人暮しする」
「いいね、それ…」
テーブルの上の梨を突つきながら彬がとんでもない事を言いやがった。
「そしたらヤり放題だね」
思わず俺は梨を噴きそうになった。