「男は…嫌い。」
私は秀太郎を直視することができなくなった。
秀太郎はタバコに火をつけた。そしてフゥーっと一息つくとゆっくりこちらを見た。
「俺が女なら迷惑じゃないの?」
秀太郎の厳しい声が聞こえる。
「そういう問題じゃないの。」
「お前、あんまり友達いないだろ。」
あんまりどころか、一人もいないと思う。それが何だと言うのだろう。
「どうでもいいでしょ。そんなこと。」
私の言葉に秀太郎はすぐに返した。
「良くないね。俺は季吹のこと友達だと思ってるよ。」
私は返事ができなかった。彼をどんな物好きかとも思った。
「…。」
私をみつめながらゆっくりと彼は続けた。
「誰かに何か言われてんの?」
「そういうわけじゃない。」
「じゃあ受け入れてよ。」
私は黙ってその場でうつ向いていた。友達という存在。
私には無縁だった。あちこち転々とする生活。殴る父。尻軽な母。自分を守ることに精一杯だった私。
「じゃあな。」
秀太郎はバイクのエンジンをかけて、私を置いて帰って行った。
蒸し暑い、初夏の出来事。