苗字もクラスもなにひとつ変わらない。
自宅が涼香の家になるってだけだ。
母親のことは、割り切った。
だが……。
「おやすみ……」
「スズ…」
暗がりの中声が行き交う。
涼の分のベッドがまだ引っ越し中だったため、やむを得ず二人は一緒に寝ていた。
「なぁスズ…」
「…ん、なに?」
「俺たちって、付き合ってるよな…」
しばらく涼香は黙ってしまったが、意を決したようにため息を洩らした。
涼の方を向いた涼香はまた泣きそうになっていた。
「私ね…お父……さんと、お母さんにはまだ……隠してるの」
涼香は死に別れる前のような痛々しい瞳で見つめ、優しく涼の頬を手で包んだ。
「……涼は、私のこと好き?」
「この前言ったろ。俺たち、お互いもっと好きになれるって」
涼香の目から一粒、涙がおちた。
「そっか……」
涼香は涼に優しくキスをして、また何度も味わうようにキスした。
「…涼……!……あのね……近親…相姦…て言うの……!…姉弟で、そういうことは……ダメなんだよ………」
泣き漏れる声が静かに響く。
「わ…わかってるって……そういうことは我慢する…だけど、この関係だけは……」
またキスが施される。
「今夜で終わろう、私たち」
「嫌だ」
「お互いもっと好きになってしまったら、求めるだけになるんだよ…?そんなの…そんなのって悲しいよ?」
切ない涼の瞳から逃げるように涼香は涼の体をきつく抱き締めた。
「お願い……!!カラダを求めることだけはしないで……!悲しすぎるよ…涼」
「スズ……」
涼から漏れる吐息が涼香を狂わせる。
ここで自分がしっかりせねば。取り返しがつかなくなる。