「雪帆ちゃん」
「ん……もうちょっと…あと五分…」
「雪帆ちゃん、朝ご飯だよ」
私はがばっと身を起こすと、互いの目と目がぴたっと合い、起こしてくれた人を見つけられた。
ヒゲは剃っているが、真琴だった。
「お……おはようございます!!すみません!私、寝坊しちゃって……?あれ…」
「今日は土曜日だよ」
「入学式は?」
「あさって」
私はホッとして布団に潜ろうと思ったが、先ほどの真琴のセリフを思い出した。
「朝ご飯、是非いただきます!」
昨夜は突然の訪問に真琴も夕飯まで手は回らなかったらしいし、私たちも疲れ切っていた。
「…もうお腹が空いて倒れそうです」
「昨日の午後からなんにも口にしてないだろ?お母さんとお姉ちゃんはさっさと召し上がられて、市内の観光に行ってるよ」
「すみません、何から何まで」
「これから一緒に食事作っていってくれれば俺は全然構わないよ。昨日言ったとおりお袋と俺だけだから、寂しいもんだよ」
「一緒に食事…」
料理は下手、洗濯は遅い、掃除は雑。
私はこれからの毎日は自分に課せられた修行だと思うことにした。
「どう?お口に合うかな」
「美味しい…!真琴さんって、料理上手ですね!」
「真琴だよ。真琴」
「あ!真琴…真琴」
言い直したら真琴が照れていた。
私は朝ご飯の美味しさに魅了され、真琴に気を許し始めていた。