『あ〜面白かったー…って泣いてる!』
「うるせーっ…グスッ」
二人がいるのは近所の映画館。
なんでこんな事になっているのかというと
事の発端は放課後まで遡る。
***
帰りのHRが終わってしまえば、
たいていの生徒は待っていたかのように教室から飛び出して行く。
俊も同様にさっさと帰り支度をしていた、その時だった。
『ねえ、黒崎君。』
「…なに」
朝の事もあってか、ぶっきらぼうに返事をかえす。
『朝はごめんね、ふざけすぎちゃった。
しゅ…黒崎君ってからかいやすいんだもん。』
「…………別に、もう気にしてないから。それだけなら俺は帰…」
『ね、映画行かない?』
「はっ!?」
また情けない声をあげてしまう…調子が狂うったらない。
『朝のお詫びって事で…俺チケット2枚持ってるからさ。
なーんて、本当は俺が見に行きたいだけなんだけど。ね、だめ??』
「…………。」
男だけで映画なんて気乗りするはずがないのに…
なぜか断れなかった。そして…
***
今の状況にいたる。
『ねえ、なんかお腹すかない?』
「…いや、別に…」
『あ!あそこになんかあるよ。黒崎君、入ろう?』
「………。」
始めからだが、コイツは人の話しを聞こうとしない。
そのうえ人を自分のペースに巻き込む。しかも素で。
『なんにする?俺はね、コーラにチーズバーガーにチキン…あとポテトのL!』
だけど、それがなぜか…
『黒崎君は?同じのでいい?』
本当になんでかわからないけど…
ふっ…
「ばーか、そんなに食えるかよ。」
『なんで笑うのさー。』
居心地が良いと感じる自分がいることに
その時俺は、初めて気付いたんだ…