ドアを開けると、リビングのような大きな部屋…
そこはカラオケセットが置いてある手前の部屋…
ドアがもう一つあって、さらに奥にも部屋が続いている。
雨音さえ聞こえない、やたらに静かな部屋…
スリッパに履き替えて、奥の部屋を覗いた。
薄暗い間接照明…
大きなベッドが部屋の大半を占めて…
枕が二つ…きれいに並べて置いてある…
真弓は立ちすくんだ…
(…ここ…)
戸惑う真弓の後ろから…孝行は肩に手を置いた…
二人はぎこちない足取りで取りあえずベッドに座った…
ベッドを取り巻く壁面の鏡…
(……どうして…?)
(………)
(寄るトコ…って、ここ…だったの?)
(………)
(何か…言ってよ、お父さん…)
孝行は…葛藤していた…
我が子を…
実の娘を…本気でこんな所は連れ込んでしまうなんて…
(おねだりのかわりってこと…?)
そんなことは考えなかった。それじゃ人でなしだ。
でも…もうとっくに父親失格だ…今さら格好つけても仕方ない。
少しでも、こんなことを想像したのは確かだ…
孝行は開き直った。
「ああ。そうだ…」