「そんなにヨカッタのか…」
孝行の嫉妬は思わずこんな質問をぶつけてしまう…涼子には残酷な言葉だったかも知れない…
涼子は目を潤ませた。
(あなたを…愛してる…)
それは孝行にもわかっていた…
(ああ…多分な…それは信じてる)
孝行は込み上げる感情をねじ伏せた。
自分だって、自分だって…
心の中ではそう繰り返している…
充分な沈黙…孝行の落ち着きを見て、涼子は素直な告白をした方がいいと思った…
(…あなたの言う通り…裕之は可愛い息子……いじらしかったの…)
孝行は黙って続きを待った。まったく同じ思いをした彼は一方では共感している。
(…こんなこと……いけないと思うと……余計に…)
涼子はここで口ごもった…
(…ふしだらな…女です…私は…)
素直になった涼子を、孝行は愛しいと思った…
トン…トン…
階段に遠慮がちな足音が聞こえた。
裕之が様子を見に恐る恐る下りてきたらしい。
(そうだ…お前は…ふしだらな母親だ…ふしだらな女房だ!)
そう言うと孝行はコタツから立ち上がった。