少女は身体が酷く重いと感じた。
額にはお絞りが乗せられていた。
ギターが頭の上で聞こえる。
心地良いアコースティックの音色に少女は身を委ねた。
少女は昨晩の出来事から目を背けるため必死だった。
起きれば自分の事を訊ねられる。
そうすれば答えなければならない。
ふと、音色が止んだ。
少女の眼前に少年が立った。
少年は見た目よりも年齢は上だが、
少女には自分と同い年だと思えた。
「大丈夫?」
少年はその声も少年だった。
少女は思わず頬を赤らめた。
自分は熱を出していたと告げられ納得したが、それとは違う熱さも少女にはあった。
「この雨の中でそんなに薄着じゃ、風邪もひいちゃうよ」
昨晩からの雨は勢いを少し弱めたが、降り続いていた。
「突然助けて下さいなんて、本当にごめんなさい。その、私、行くところがなかったの」
少女ははっとした。
自ら行くところがないと吐露してしまった。
しかし、少年はにっこり笑って頷いた。
それだけだった。
淡い栗色の髪が揺れた。
少女は堰を切ったように泣き出した。