リョウが復活したのはそれから2日後。
俺は黙って看病していた…リイチはやっぱり、普通だった。
曖昧な時間が過ぎる。
春は終わって夏が近づいてくる。
学ランが白シャツに変わる…。
リイチは俺を桜、とは呼ばなくなった。
俺はユウキくん、と呼ばれる度、胸が締め付けられて…苦しい。
こんなんなら、人を好きになんてならなけりゃ良かった。
リョウは時々、キスしてくる。
俺もなんだか、避ける気がしなくて普通に受け止める。
激しい、舌が絡まるようなキスじゃなくていたわるような口づけだから。
リョウは好きだ。
安心するし…一緒にいて心地いいから。
リイチには締め付けられる胸が、リョウといるとホッと暖かくなる。
俺とリョウはどんどん一緒にいる時間が延びる。
リイチと二人きりにはなりたくなかったから。
リイチと二人になると、俺は俺でなくなって…リイチにすがりたくなる。
お願いだから…って叫びたくなる。
俺を好きになって、もう一度かまって。
もう逃げないからって。
でもリイチは俺を見てくれない。
見ても笑うだけ。
冷たい目も…イタズラっぽい言葉もない。
「どうしたの…、ユウキくん」
好きなんだ、リイチ。
声に…ならない…。
「なんでもない」
「そう?…あ、そうそう…リョウはいい奴だから大事にね」
笑って言わないで。
そんなこと聞きたくない
「…うん、わかってる」
リイチはニコっとして俺を見た。
その目が本当に優しくて…柔らかくて。
切なさが襲う。
愛しくて泣きたくなる。
あんな意地悪されたのに
…なんで好きなの?
理由なんてないんだろうな…あの、素直な告白が本当は嘘だったとしても…俺は…。
黙って俯く俺の頬に、リイチの指が触れそうに近づいた。
俺の目と、リイチの視線が絡む。
俺の心臓が高鳴って、リイチは…
「…さ…」
リイチが小さく囁いた瞬間、扉が開いた。
伸ばした指は引っ込んで
言葉の続きは聞けなくなった。
リイチはサッと机に向かい、俺は振り返って開いた扉から顔を出したリョウを見ていた。
…なんだったんだ?
今のは…。
さ…。
そのあと、なんて言うつもりだったの…?
教えてよ、リイチ。
俺はもう気持ちを抑えられないよ。
その夜…俺は静かにベッドから降り…。
リイチがいないのに気づいた。