どこだ…?
月明かりが眩しい。
いつかリョウがリイチを氷で出来た月、と例えたことを思い出す。
リイチ。
好きだ、リイチが。
冷たい目と、優しい目。
意地悪な言葉と、拗ねたような言葉。
リイチ…どこ…?
「……桜?…」
パッと振り向くと、驚いた顔をしたリイチが立っていた。
月明かりの下で、どこか頼りなげなリイチ。
青ざめた顔をして、人形のように立ち尽くしている。
「リイチ」
「馬鹿、なんでいるの」
馬鹿?
なんでだよ。
リイチは大きなため息をついて頭をかいた。
「…ったく…。努力が水の泡。どこまで僕を困らせるの」
「な…困ってんのは俺の方だよ!!リイチのせいで…俺は…」
つかつか、とリイチが近づく。
真っ赤になって言葉がつかえる。
「何?」
「…あ、いや…だから…お、俺は…」
馬鹿、言えよ!
リイチが好きだって…。
「桜、僕は君が好きだ」
…。
…え?
「リョウのことが好きなのは知ってる。でも僕は君が好きだ。
初めて会った時から。
だから…二人がいるのを見れないんだ。
…僕は部屋を代えて貰うつもり。このままじゃ、君を壊したくなる」
な…なに言ってんの?
リイチはホッとため息をついた。
「言わないでいようと思ってたのに…。あんな顔みたら冷静じゃいられなくなるでしょ」
「リイチ…ねえ、俺を好きなの?」
リイチの両目…あれだけ欲していた月の瞳がヒタと据えられ…俺を圧倒する。
「うん…滅茶苦茶にしたい」
「…逃げないよ、俺。…リイチ、滅茶苦茶にしてよ。俺…」
掠れた声が塞がれた。
唇に無理矢理、舌が捩じ込まれる。
リョウの優しさなど微塵もないのに…俺はおかしくなっていく。
もう何もかも 月の光のせいにしよう。
俺は、リイチにしがみついた…。