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魔女【14】

MICORO  2009-07-26投稿
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一学期の終業式の翌日。

パパを会社に送り出し、あたしも家を出た。


ボストンバッグに入るだけの着替えと、お気に入りのCDを数枚。
そして、
貯金通帳。

あたしが生まれた時にママが作った、あたし名義の通帳。

結婚費用に充てるつもりで、ママがコツコツと貯めてきていて、額面は百万円近い金額になっていた。


あたしは通帳を胸に抱いて、涙をこぼした。

ママ…。

ごめんね。

あたしのこと、いつも大事にしてくれてたのに…。

あたし、なんであんなことしたのかな…。


せめて、パパとのこと、ママに話してたら、別の結果になったんだろうね。


あたし、
いちばん大切な人を

殺してしまったんだね。


あたしって

人間じゃないよね?



あたしは、パパ宛てに手紙を書いた。



[大好きなパパへ

パパが、そんなにもママを愛してたなんて、知らなかったの。

パパ。
ごめんね。

あたし、
パパの前から消えるね。

だから、
もう泣かないで。

千絵]



駅で、夜行列車の切符を買った。

行き先は、京都。

ママが短大の頃、二年間を過ごした街。

「千絵もね、大学は京都になさい。
東京みたいに大きすぎないし、
大阪みたいに雑然としていない。
大学も多いしね。
千年の歴史と、新しい文化が共存してる、不思議な街よ。
きっと、千絵も好きになるわ。
私の娘なんだもん」

ママはそう言って、色んな話をしてくれた。

あたしはママの話を聞きながら、ずっと憧れてたんだよ…。



列車の時間まで、あたしは駅前のマンガ喫茶で時間を潰した。

特急と新幹線を乗り継げば、夕方には京都に着くんだけど…。


あたし、
少しだけ、期待してた。

パパが、血相を変えて、あたしを探してくれるって…。

そして、きっとあたしを見付けて、連れ戻してくれるって…。


だけど、パパはとうとう、駅には現れなかった。


あたしは、夜行列車の硬い寝台で、声を殺して、一晩中泣いていた。

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