「そこの『南座』のちょっと先に、都路里の本店があるさかい、中で待っといて。スグ行くから」
「ツジリ?」
「そや。都路里。知らんのか?」
あたしは頷いた。
「へえ、めずらし。女の子は都路里の抹茶パフェ食べに、わざわざ全国から来るんやで」
「へえ…」
「まあ、ええわ。とにかく入って何でも食べとき。オレが奢ったるさかい、心配いらん」
三十分ほどして、お兄さんが現れた。
向かいに座って、注文を済ませる。
「オレ、井上達夫。お前は?」
初対面で、『お前』??
ちょっとカチンと来たが、あたしは我慢した。
「千絵です。支倉千絵」
「千絵は、いくつ?中学生やろ?」
「えっ、あ、はい。一年です」
「ってことは、13歳?」
「ハイ…」
運ばれて来たパフェを、おいしそうに食べながら、あたしを観察する。
「処女やないな?」
突然言われて、あたし絶句した。
でも、素直に頷いてた。
どうして、わかるんだろう…。
「行くとこないんやったらお前、オレの部屋に来るか?
何にもせえへん、とは言わん。
それでもよかったら、しばらく居って、ええわ」
「それって…」
あたしは『援助交際?』と言おうとしたが、周囲を憚って、飲み込んだ。
「まあ、そやな。援交みたいなもんや。
はっきり言うけど、オレ、お前とやりたい。さっきから、チ☆ポ、勃ちっぱなしや」
迷う必要などない。
「馬鹿にしないで」
そう、断るべきだった。
だけど、口をついて出たのは、
「いつまで置いてくれますか?」
期間は、とりあえず一ヶ月。
あたしは、達夫の希望するときに、いつでも身体を提供する。
それが条件。
「オレ、貧乏やから、小遣いまでは無理やけど、メシくらいは、食わしたる。」
あたしは黙って頷いた。
お金が無いって思わせた方が得策みたいだったから…。
割の合わない、契約だと思う。
でも、今は達夫に頼るしかない。
家出してきた中学生にとって、お金だけではどうしようもないこともある。
パパの元に帰ることだけは、絶対にできないんだから…。
あたしは達夫の後に着いて行った。