目が覚めたのは、昼近くだった。
久しぶりに、ゆっくり眠ったような気がする。
キスを拒まれて落ち込んだのか、達夫はあれから求めては来なかった。
ベッドの隣に入って来た形跡もないから、もしかしたらリビングのソファーに寝たのかも…。
気の毒なことをしたと思うけど、
やっぱりキスだけはイヤ。
身体はシャワーで洗い流せるけど、
唇だけは…、
好きな人でないと、許せない。
空腹を覚えて、
あたしはリビングに行った。
小さなガラステーブルの上には、コンビニの袋と置き手紙。
『千絵、おはよう。
学校に行って来る。
朝メシ買っといたから、ちゃんと食えよ。
バイトで、帰りは遅いから、夜は外食でもしといて。
金は袋の中に入ってる。
足りなかったら後は自腹だぞ!
達夫』
あの人、学生だったんだ。
あんなことしてたから、てっきりプータローかとおもってたけど…。
コンビニの袋の中には、タマゴサンドとカフェオレ。
あとは9千円と小銭が少し。
それに、レシート一枚。
一万円札で買い物して、お釣りを全部置いて行ったんだ…。
ビンボーだって言ってたけど、大丈夫かなぁ…。
ちょっと心配。
でも、所詮通りすがりの人。
あたしが棲家を見付けまでの関係。
あたしはソファーに腰を下ろして、サンドイッチに齧りついた。
おいしい!
タマゴサンドって、あたしの大好物。
偶然にしては、上出来だよ。達夫クン。
ご機嫌でパクついてると、
急に胸がムカムカしてきて、
あたし、トイレに駆け込んだ。
どうしたんだろう?
色んなことがあったから、きっと疲れてるんだよね。
あたしは、再びベッドに潜り込んだ。
再び目覚めた時、窓の外は薄暗くなっていた。
あたしは、ふと思い付いて、出掛けることにした。
達夫クンと一緒に、晩御飯を食べよう。
ジーンズのミニスカートに、パステルカラーのTシャツを着て、四条大橋に向かう。
橋の人混みの中に、達夫クンはいた。
あたしは後ろからそっと近づいて、声をかけた。