画面の角には、
見覚えのある佐倉の顔。
アナウンサーが、無機質な声で、佐倉の死を報じていた。
佐倉さんが、
死んだ!?
あたしは、画面に釘づけになった。
日曜日の夕方。
佐倉が、京都に出掛けようとしたのを、
妻の雅美が見咎め、痴話喧嘩になった。
逆上した雅美は、包丁で佐倉を刺殺した。
あたしは床にへたりこんだ。
後から後から、涙が溢れてくる。
佐倉さんは、
来てくれるつもりだったんだ…。
佐倉さんを殺したのは、
あたし………。
あたしにさえ、出会わなければ、死なないで、済んだ。
あたし…
やっぱり、悪魔だ。
周りの人が、
みんな不幸になっていく…。
パパ…
パパに逢いたい…
その時、あたしは強烈な腹痛に襲われた。
子宮を捩切られるような痛みで、あたしは床の上を転げ回る。
誰かぁ!
誰か、助けて!
あたしは声の限りに叫ぶ。
助けてぇ!!
あたしの、赤ちゃん!
赤ちゃんが……………。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!
激しくドアをノックする音。
それっきり、
あたしの記憶が途絶えた…。
ちえ……………………。
ちえ………。
千絵…。
懐かしい声…。
パパ……。
パパ?
「千絵…」
恐る恐る…
あたしは目を開けた。
目の前には
懐かしいパパの顔があった。
「千絵。もう、心配ないよ」
「パパぁ!!」
覗き込むパパの首に、
あたしはしがみついた。
パパが、しっかりと抱きしめてくれる。
「大丈夫か?」
パパが言う。
「平気。それより、もっと強く、抱っこして!」
パパの腕に、力がこもった。
「千絵!」
「パパ!逢いたかったよう!」
あたしは声を上げて泣いた。
いつまでも、
いつまでも…。
パパの温かい腕の中で…。