罪の意識が蘇る。
「ど、どうしよう!パパッ!あたし、どうしようっ!」
錯乱するあたしの頬を、パパが打つ。
「千絵、落ち着け!まず、救急車だ!」
パパは電話機を指差して怒鳴った。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
彼女の傷はそれほど深くなかった。
彼女の乳房が豊かだったのと、あたしが非力だったことで、
傷は肺まで達していなかったらしい。
その夜、
あたしは警察で取り調べを受けた。
あたしは、事件のいきさつを正直に話した。
パパとの関係だけは除いて…。
翌朝、
理由はわからないけど、
あたしは釈放された。
何の罰もなく…。
パパに訊ねても、何も教えてはくれなかった。
ただ、彼女には感謝しろと、言われただけ…。
年明けから、あたしは普段通り登校した。
あんな事件を起こしたのに、すべては今まで通りに流れていった。
パパとの関係を除いては……。
そして三月。
あたしは中学を卒業し、
再び京都に出ることにした。
彼女が全快し、
パパと暮らすことになったから…。
高校は、地元で進学が決まっていたが、
進路指導の先生の計らいで、
京都の高校に、編入させてもらえることになった。
地元高校よりも、ランクは落ちるけど、あたしにとって、たいした問題ではなかった。
部屋は、パパが借りてくれて、
毎月の仕送りもしてくれることになった。
「もう、千絵にしてやれるのは、
このくらいしかない。
許してくれ…」
パパはそう言って、
淋しく笑った。
旅立ちの前夜。
あたしたちは、激しく求め合った。
あたしは数え切れないくらい、官能の津波に翻弄され、
パパは、自分が回復しなくなっても、
抱擁をやめなかった。
明け方、
パパはあたしをむぎゅって抱きしめて、
涙をこぼした。
「千絵が娘じゃなかったら、
どんなによかったか…」
「でも、あの人を、愛してるんでしょう?」
あたしは、わざと醒めた口調で訊ねた。
パパは……、
何も答えなかった。
(第一部・終)