声をかけるにかけられなくて、その人形のような繊細な横顔を見つめていた。
突然現れた謎の少年。
これが少女だったら、俺は…うん、恋に堕ちていたに違いない。
その水晶みたいな瞳と、歌声に俺はきっと…。
「鋼さん…」
歌い終わったユウの声が震えてる。
思わず抱き締めたくなるくらい儚げに。
「これ…何て唄?
誰の…唄なの」
びっくりした。
歌えるくせに知らないなんて。
「クレセント・ムーンってバンドの「僕のいる場所」…知らないのか?」
小さな頷き。
幼子みたいに、コクリと一回だけ。
キラキラの少女漫画みたいに綺麗な涙が瞬間、落ちてジーンズに染みを作った。
俺は、まあ、どうかしてる行動を取った。
隣で震えてるユウの肩を引き寄せて抱き締めたのだ…うん、確かにこのシチュエーション、相手が女の子なら運命だ。
だが、相手が少年なら…単なる慰める行為になるわけだ。
ユウは泣きながら、肩に頭を載せた。
「僕の…いる場所…」