透き通っている…体を通り抜ける粉雪。
「ちょ…おい、ユウ」
ユウは微笑んだ。
寂しそうでも、なんでもない心から幸せそうに。
唇が開いて文字を作った
…声が聞こえない。
あ
り
が
と
瞬間、ふっと消えてしまった…。
俺の頬に触れた雪みたいに消えてしまった。
嘘だ。
幻…?
いま、ユウがいた場所に手を伸ばした…降りしきる雪は俺を通り抜けることはない…当たり前だ。
嘘だ。
居ないなんて、嘘だ。
振り返った俺は、気づいた…気づいてしまった。
足跡が一つぶん。
俺だけしかない。
ユウ、ユウ…。
子犬みたいな目で、立ってるような気がして…俺はしばらくずっと、ここに居たんだよ。
お前が幻だとは思えなくて俺は…。
どれくらい居たんだろう
俺は何度も振り返って、それでもお前は…。
居なかったね。
まるで始めから居なかったみたいに。