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遠い日の唄 16

にゃんこ  2010-01-18投稿
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僕は目を覚ました。

目覚めてしまった…。

いつもと同じ真っ白な天井真っ白な壁、真っ白な布団
柔らかい布団でさえ重たく感じる不甲斐ない体。

涙だ。
僕は泣いていた。

暖かい液体が目のはしっこを伝ってきっと枕にシミを作るんだ。
体をひねってそれを見ることさえダルいけど。

僕のいる場所。

…戻って来ちゃったんだなあ…。


「ユウ、泣いてるの?」

心配そうな、双子の姉の声で、僕は笑みらしきものを反射的に浮かべた。

「鮎ちゃん」

掠れた声。

姉の鮎は、心底驚いたように僕を見下ろした。
僕…声出したの…どんくらいぶりかなあ…。

「ユウ!…ま、待って、先生呼んで…」

「行かないで」

うん、今の声はしっかりしてたな。

鮎ちゃんは驚いた時の癖で唇を噛み締めて、じっと見返してきた。

「クレセント…ムーン」

鮎ちゃんの目が丸くなる

「時々聞かせてくれてたよね…ありがと…」

ああ、それだけ言うだけでもしんどい。
体、熱い…いや、寒い?
でも伝えなきゃ…。


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