昨日から降り続いた粉雪が、溶けることなく積もり、今朝の通学路はひどく狭かった。定刻通り、いつも同じ制服を着た女子生徒を見かけるはずだが、今日はいなかった。
教室に入ると、この高校入学以来初めて見る光景が目に入った。
教室には5人しかいなかった。
「倉真(クラマ)くん、おはよ!」
このクラスの元気印、澄越三春(スミコシ ミハル)だ。
今日はいつにもまして元気そうだった。
倉真はあいさつを返し、この現状は何なのか尋ねた。
「雪で電車も止まっちゃって、バスは遅れたり運休したりで、みんな来れないみたい。」
茶髪を揺らしながら明るく応えた。
「三春ってサボり魔なワリにこういう日は来るよね〜。」
三春の友だち、利香(リカ)と佳乃(ヨシノ)も来ていた。
「当たり前じゃん。だいたいこんな日は授業無くなって、今日頑張って来た人はあとで授業免除に…。」
「ならない、ならない!」
三春と利香を尻目に、佳乃は倉真に話しかけた。
「倉真くん、おはよう。」
「おはよ。お前らはいつでも三人そろってるな、仲良いっていうかなんつーか。」
その時教室のドアが開き、担任教師の笠倉美月(カサクラ ミツキ)が入ってきた。
「みんなよく来てくれました、うん…5人か。」
美月は長い黒髪を後ろでシニョンにまとめていた。
キリッとしたスーツ姿だが、顔はまだまだ新任教師の垢抜けない雰囲気が漂い、幼さすら残る。