あれは一月前のこと。
俺は高校生アートコンクールに出品する作品にかなり追われていた。
部室に残って一人黙々と描いていた。
気づけば、六時を回り…俺は伸びをした…と、その手が何かに触れてギョッとして振り替えると…。
葉瑠先輩がいた。
薄暗い部室で、明るい月に照らされていた。
その目がいつもと違うから…俺は慌てて立ち上がろうとした。
が。
先輩は俺の両肩を押さえつけて立たせてくれない。
後ろから、その腕が伸びてきて俺の鎖骨で交差する。
「先輩?」
葉瑠先輩のサラサラした茶色の髪が俺の頬に触れた。
「ちょっと…何すか」
心底戸惑っていた。
こんなに他人と密着したのは初めてだったから。
「…俺、今…変…」
葉瑠先輩の長くて冷たい指が俺の首筋に滑ってくる…
何これ、どうゆう状況?
「冗談が過ぎますよ」
俺は持ってた絵筆を置いてその手を掴んだ。
「しよっか、風見…」
何を、と言おうとした唇を塞がれた。
月が輝いている…。
俺の眼に月の光がもろに飛び込んできて、突き刺すみたいだ…。
キスされながら、そう考えていた。