律子は声を殺して泣いた。
なぜいつもこの衝動が抑えられないのだろう。
達した後考えるのは倉真のことだった。
律子の瞳はぼんやり宙を眺めていた。
「新島か〜。あの人どの授業でも真面目だからなぁ。」
やっぱり、と美月は微笑みながら倉真が淹れたココアを飲んだ。
「あんなに遠くから通ってたんだ。」
「うん、本当は学校の近くに住んでたんだけど、中学生の時にお母さんが再婚されて、再婚相手さんのお家に引っ越しちゃったんだって。」
「へぇ、よく知ってるね。」
「担任ですから。…あんまり遠くだから少し気になって調べたの。」
この話を聞いた後で別れ際の律子の表情を思い返すと、何か不安感のようなものが倉真の中に芽生えた。
それが何なのかは分からなかった。
何より美月に余計な心配をかけたくなかった。
倉真は不安をココアと一緒に飲み込んだ。