私は修と話す内に、目頭が熱くなるのを覚えた
「女将さん、何を考えることがありますか…もし仮に、マスクで顔を隠す必要があるとするなら、隠すのは彼等の方ですよ。女将さんの部屋に忍び込む訳ですから。…部屋の主人が顔を隠す方がおかしいですよ。そうでしょ。顔を隠すのは泥棒の方で、お巡りが顔を隠しますか?」
「判った。判りました。言う通りにします。今夜から…」
「それと、女将さん、これから先はお節介なことですが…話をするだけで癒されるなんて、嘘です。思い切りセックスを楽しむべきです…話が長くなるので止めますが…それが人生ですよ…」
「判りました。そうします…人生ですか。…一度ですものね…」
「じゃあ、今夜の相手をおしえますね、そ…」
「修さん!聞かなくていい…私、お部屋で楽しみに待ちます。ただ…マスクはしませんが…お布団の中で眠って待ちます。その都度、修さんが決めてくれた相手を…楽しみに待つことにします…人生の出会いを楽しみに…」
「なるほど…大人ですね。じゃ、そうしましょう。女将さんが眠っていても遠慮は要らないから、デカチンを入れていいから、と伝えておきますね」
「修さん…少し意地悪ね」
「はい。私、意地悪なんですよ…じゃ、私、買い物を思い出しましたから、ちょっと出かけます」
と言って出て行った。
私も部屋に帰って少し睡眠を取ることにした。
1、2時間、と思ってベッドに横になった。が、目が醒めたのは午後の1時だった。
シャワーを浴び、トーストを焼きスクランブルの卵にベーコン、珈琲が揃った頃、窓から見える駐車場に修の車が帰ってきた。
「女将さん、こっちが入居者一同からのプレゼントです。…こっちが、夜のパートナー、6人から。実は、みんなと話して昨日にと思ったんですが間に合わなくて…」
修は大きな紙袋を二つ、テーブルの上に置いた。
「うわ、プレゼントとは嬉しいな。でも、何のお祝い?…ここで開けてもいいの?」
「何のお祝いって、甘い卵焼きの復活祝いですよ。
女将さんの昨夜の初夜に間に合わなかった!
…そんなお祝いのプレゼントですから、ここでは開けないで下さい!お部屋でこっそり…今夜から使って下さい」
「まあ!初夜だなんて。恥ずかしい。そっちの関係ね、じゃ、こっそり、見ます。色々ありがとう」
「それと、これは私から…こんなものは照れ臭いんだけど…」
一度、ドアを出た修は大きな花束を抱えて戻った